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LCCの主要機材となり得るB787
ANAがローンチカスタマーとして世界にさきがけて導入したことで日本でも大きな注目を集めているB787。そのタイミングは、奇しくも国内初の本格LCCの相次ぐ就航と重なりました。羽田の再拡張から続く、日本の空が激変する時代において、その中核をなすB787とLCCですが、現在のところジェットスター(2013年半ばに導入予定)以外にB787を導入予定のLCCはありません。国内のLCCはいずれもA320を基本機材として運航しており、そもそも海外においてもA320やB737以外の機種を就航させているLCCは決して多くはありません。
そうした中で、旅のあり方そのものを大きく変える可能性を大きく秘めたLCCが、同じく空機・路線網構築を大きく変える可能性を秘めたB787を主力機材として導入する日は来るのでしょうか?両者の特徴や発展性、利用可能性などを踏まえながら考えてみたいと思います。
LCCの低コスト化実現を強力にサポートし得るB787の経済効率
徹底した低コスト化を図るLCCのビジネスモデルにおいては、使用する航空機の運航費用の低減は中核をなす必須の要素です。したがって、従来機に比べ燃費効率が飛躍的に向上し、航続距離も大きく伸びたB787は極めて親和性の高い機体と言えるでしょう。
座席規模の最適なB787
しかし、LCCとの親和性の高さはそうした狭義の意味での運航コストだけに留まりません。というのも、LCCでは低コスト実現のためにできるだけ空席をなくし満席に近い状態で運航する必要があります。したがって、B747やA380、B777などの大型機では座席を埋めきれないというリスクが生じることになります。B787は多すぎず少なすぎない座席数を持つ中型機ということで、その意味でもLCCの主要機材としての可能性を大きく秘めた機材ということが言えます。
また、B787の座席規模がもたらすメリットはそれ以外にもあります。以前は座席を埋めきれないという理由から断念していた大型機でしか運航できない距離に位置する地域への就航を、航続距離がこれまでの中型機と比較して飛躍的に伸びたB787の場合は、その座席規模により採算面からも運航可能になるということです。このことによって、たとえば東京-南アフリカ、東京-マドリードなど過去に運航休止となった路線などはもちろん、これまで採算面で見合わせざるを得なかった路線への就航を柔軟に検討することができるようになるわけです。
座席の狭さは問題となるか?
LCCの使用する機材の大きな特徴は座席のシートピッチが狭いという点にあります。シートピッチが狭い分より長い時間飛行する必要のある中距離・長距離路線においては、乗客にかかるストレスは非常に大きなものとなる可能性があります。現在日本の航空会社(JAL/ANA)の国際線エコノミークラスのシートピッチは31インチ(=78.74cm)であるのに対し、一般的なLCCのシートピッチは29インチ(=73.6cm)で、その差は5cmあります。
しかも、JALやANAなどのレガシーキャリアはLCCとの差別化を図るためエコノミークラスのシートピッチを34インチ(86.36cm)まで広げる動きが広がっているため、LCCのシートピッチとの差が最大で15cm程度にもなるということを考えると、中・長距離路線においては乗客が耐えられる程度のシートピッチを確保できるかどうかが大きな課題となるでしょう。
そういったことを踏まえると、ジェットスターが導入するB787が就航する路線の成否が一つの試金石となって、他のLCCも一気にB787やあるいはA350の導入へと踏み切る可能性が出てくることが考えられます。